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2007年9月15日 (土)

ヤイリギター工場訪問

3ヶ月も前の話になりますが、今年の6月16日(土)に岐阜県は可児市のKヤイリギター本社へ工場見学に行った時のお話をさせて戴きます。
 
Kani奈良から浜松への(出張先での)移動途中に、半日程時間が取れたので、どうしようかと思い悩んでしたところ、「そうだ北東へ昇れば岐阜だ。ヤイリへ行こう!」と思い立ちました。
レンタカーで約3時間の道程ですが、そこはそこ、ここぞとばかり頑張って行ってきました。
九州人にはこんなチャンス滅多に無いし、高校生の頃から一度は行ってみたいと思っていましたからね!
 
電話で電撃アポ取り、「今日の午後からなら、丁度工場見学者も居るので御一緒にどうぞ」と、何とタイミングばっちりやなあ!

Yairidy45_3じつは私、高校生の頃、 親にヤイリギターを買ってもらってから、ずっと傍らに居たのはヤイリギターでした。 (※右の写真は、我が歴戦の相棒 1978年製 K.Yairi DY-45 CUSTOM)
5年程前にDY-45修理の件で、ルシアーの道前氏には大変お世話になり、是非御礼を言わねばと思っておったわけです。
子供の頃からカタログで憧れていたヤイリの工場とは、果たしてどんなところだろうか、気持ちは昂ぶりながら、いざ出陣じゃあ!

Road_3奈良市内から約3時間、高山方面へと高速を飛ばしました。
もちろん、この方面を運転したのは私にとっては初めての事。
(カーナビが無ければ、簡単には来られないところ。今のレンタカーは便利じゃなあ)

小牧インターを下り、可児市に入りました。
その日は朝から快晴。
ワクワクと期待もあり、初めての山間部の景色も楽しく、3時間はあっという間に過ぎる程の快適なドライブとなりました。

山間の町、可児市は空気は清く、自然豊かな街でした。
Front_4
ケヤキの並木道を抜けると‥‥そこに、カタログで見覚えのある「ヤイリギター」の看板がどど~んと!

事務所棟の玄関先、お客様駐車場に車を駐め、事務所にさしかかると、何とも哀愁漂う「K.Yairi」の手作り看板が。
Front2_2丁度お昼休み中だったので、最初何方もいらっしゃらず、応接イスで待つ事30分程。ちょっと物騒?
(※この天使のブロンズ像、どこかで見た事がある!と思ったら、エンジェルシリーズのロゴそのものじゃないか‥‥)

当日は私を含めて4名の工場見学者がありました。
午後1時になったので、ボチボチ揃った他の見学者達と共に、ヤイリギターの方に促されて工場内へ。
材料の調達から完成・出荷に至るまでのプロセスを、実際の製作現場において、詳しく御説明戴きました。
 
Stockwood_3私の第一印象‥‥とにかく何処までも積み上げられた材の山!凄い在庫量!
世界的にギター材が枯渇してきた現在、この大量のストックはまさしく宝の山!
ギター好きの我々にとっては、まるで金山の中にいる様!

Stockwoods2_4聞くところによると矢入社長は、会社に利益が出ると、その殆どをギター材の入手につぎ込んで来たらしい。
それが「ヤイリギターの強さの秘密」と言っても過言ではなかろう。

Hole_2何てったって、食堂兼コンサートホールの「音来ホール」の床全面が、分厚いマホガニー材。
いざとなったら、ギター材として使えるよう簡単に剥がせるらしい。これはギター工場らしいアイデア!

御存じの通り、Body_2ギターのネック(卓)・サイド(側面)・バック(裏面)に使われている「マホガニー」は、今や稀少材になり、ワシントン条約で輸出入が禁止されそうだと聞きました。

例えば有名なアメリカのギターメーカー「Martin社」のネック材は、現在は「ナトー材」を「ハードウッド」と表記し、マホガニーは殆ど使用されていないのが現状。
今や、どのギター工房も手が出る程欲しい材ではないでしょうか。

Blacing_2 さて、いずれの行程も最低限の機械化で効率を上げていますが、基本的にはどの工程でも手作業や人間の五感が優先され、1本1本丁寧に生み出されていました。

また、製作直前の材に音楽を聴かせる為の調整室や、出荷する前にナント3ヶ月間も大音量の音楽をギターに聴かせる為の音響室がある。
製造現場ではある意味「無駄」とも言える時間をわざわざ掛けているらしいのです。
 
「天使が宿る時間」‥‥ここで音楽のシャワーを浴び続ける3ヶ月の間に、ギターが楽器に生まれ変わる‥‥命が吹き込まれ、天使が宿ると言うのである。

Finishing「我々は音を生み出す楽器を作っているんだ」と言う自負が、Kヤイリの根底にあると思われます。
この工程によって、ギターにどれだけの効果があるか実際に手に取ったユーザーには実感として分からないわけですが、少なくともそういった姿勢と、生まれてきた楽器の確かさが、世界中でKヤイリギターを選択するミュージシャン達に伝わっている事は間違いないようです。

Semiorder_3 セミオーダー品を作る部門の掲示板には、お客様からの注文内容が事細かに記載され、職人さんが1本1本、確かめながらネックを削っておられました。!

Yairi2_2工場2Fの一角にて、フルオーダーのギターをコツコツと製作している、「カスタムショップのマスタービルダー小池氏」の製作風景も拝見しました。
天井からは、貴重なAAAの材料がぶら下がっています。
ヤイリギターでは、定年後の製作者に技術を若い世代に伝えていく為、こつこつと製作できる工房を個々に用意しているらしい。(温故知新とは、まさしくこの事‥‥)

工場見学ツアーの最後は極めつけ!
Showroom_2事務所2Fのショールームで、「ここにあるギターは自由に、好きなだけ弾いて帰って下さって結構です!」と言われ、プロトタイプや展示会用に作られたギター多数に囲まれながら、何十本も弾き倒させて戴きました。
至福の時間が過ぎていきました‥‥♪
ちなみに、とても気に入ったギターがありまして、売って戴けるのか聞いてみたところ、「全て非売品です」との事。残念!

Yairi3_2若手製作者のホープである道前氏も、わざわざ作業の手を止めてショールームまでお越し戴けました。
やっと念願の御礼が言えて、それだけでも伺った甲斐があったというものです。
 
Noctern道前氏は、話題のギター「ノクターン」の発明者で、現在はノクターン専門に製作される事が多いようです。
これからも、ますます素晴らしいギターを生み出し続けて欲しいと思います。(※写真右側は、ノクターンを手にするプロからのメッセージでしょうか)

とにかく、とってもとっても幸せな一時を過ごさせて戴きました。
また、「遠方からわざわざお越しの為」と、オリジナルTシャツも戴いて感激!

またまたKヤイリファンになった!そんな楽しい一日でした。
ヤイリギターの方々、本当に有り難うございました。
 
ヤイリギター公式HP: http://www.yairi.co.jp
 
さて、こうしてヤイリギターの工場を拝見して思った事があります。

楽器製作には、やはり木材の一番良い所、音響的に優れた部分を使用するわけですが、自然破壊や地球環境の事を考えると、今まで多くのメーカーが行ってきた様に、増産・消費の拡大を続ける訳にはいかないと思うのです。
そのために何をすべきか、ギターメーカーはそれぞれに模索しています。(例えばMartin社は他の材料への転化策を講じる等)

そんな中、ヤイリギターは創業当時から「永久保証」を謳う事で、工場で一旦生み出されたギターを、長年使い続けてもらう事で、木材を大切に消費する事を実践してこられたようです。
例えば、ヤイリギターでは、木と木の接着には昔ながらのニカワが使用されており、いつでもギターを解体し、修理する事が出来ます。
また闇雲な増産をせず、一日20本程度の生産量を堅持し、自社の技術を蓄積しながら手工を貫く事で、昨今大量に生産・消費される韓国・中国からの低価格ギターとは一線を画しているわけです。

世界中の楽器を愛する人々の中で一目を置かれ、尊敬され続ける所以が、矢入一男氏率いるこの「ヤイリギター」には脈々と流れているようです。

「世界に冠たる日本の手工ギター ヤイリギター」に、今後も目が離せませんね。
 
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コメント

初めまして岩井ともうします。ギター暦は長いのですが
一度工場を拝見したくメールを書きました。

投稿: 岩井三郎 | 2008年2月13日 (水) 18時45分

コメント書込み有り難うございます。
管理人のはっちゃんです。

せっかく書き込んでいただいたのですが、私はヤイリギターさんとは全く無関係の大分県在住のアマチュアミュージシャンです。

御希望の件、下記のヤイリギターさんに直接アポイント取ってみられたら如何でしょうか?

(株)ヤイリギター www.yairi.co.jp
〒509-0203 岐阜県可児市下恵土3230-2
TEL: 0574-62-1138

良い出会いがあります事を祈っております。

投稿: はっちゃん | 2008年2月13日 (水) 19時08分

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